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箱の中で笑っているあなたは、いったい誰?

前回、「140年の歴史ある日本最古の芸術大学のギャラリー」と名乗りつつ、本文では大学の「140年の歴史」について特に触れることなく終わってしまっていたので、今回はそこを起点にお話を始めてみます。

京都市立芸術大学の前身である京都府画学校が設立されたのは、1880年(明治13年)のことです。その後、学校の名称は京都市画学校、京都市美術学校、京都市立美術工芸学校、京都市立絵画専門学校、京都市立美術専門学校、京都市立美術大学と変遷し、1969年に京都市立音楽短期大学と合併して京都市立芸術大学となりました。

大学の附属施設である京都市立芸術大学芸術資料館では、1894年(明治27年)以来の卒業作品に加え、京都府画学校の時代から現在に至るまでに集められてきた「参考品」など約4000点を収蔵しています。この「参考品」とは、卒業作品以外の美術・工芸作品や絵手本・粉本・模本、写真・書類など、学校の教育・研究活動にまつわる資料のことを指しています。大学の歴史アーカイブともいえるこれらのコレクションは、本学キャンパスにある芸術資料館の陳列室での展覧会で展示されるほか、全国の美術館などにも貸し出しされるなど、日本各地で広く紹介されています。

そして、京都市立芸術大学ギャラリー@KCUAでは、これらのコレクションを新たな視点から調査・研究・活用することを目指した実験的な展覧会を毎年1回実施しています。

今回、前回とトップ画像でニコニコしながら座っているあの子は、「参考品」の中でも特殊なコレクション、1969年に教員・学生からなる美術調査隊によって収集された、ニューギニア島北東部のセピック川流域の神像や仮面、土器を中心とする「ニューギニア民族資料」のうちの1点で、@KCUAでの展覧会「移動する物質——ニューギニア民族資料」(2017)の主人公でもあります。

世界各地の美術館・博物館の収蔵品の多くは、さまざまな場所からの移動を経て保管されています。そこで、この展覧会「移動する物質——ニューギニア民族資料」では、モノの「移動」に着目することにしました。

@KCUAはサテライトギャラリーで、大学のキャンパスとは離れた場所にあるため、大学の収蔵品を展示するためには30分ほど車に載せて運搬する必要があります。そこで、収蔵庫からギャラリー到着までの様子を題材とした映像を制作することにしました。ぜひ音にも注目してご覧ください。

展覧会では、展示台の代わりに運搬に用いた梱包材(木箱)を用いて展示しています。

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展覧会のアーカイブページではより多くの展示風景写真を紹介しています。もっと見たい!という方は以下のリンクからどうぞ。(撮影:松見拓也)

また、この展覧会を実施した2017年の年次報告書冊子では、企画にまつわるお話の特集記事が掲載されています。さらに深く知りたくなった……という方に。

このように、引き出しを開けるとより多くの情報が出てくる……といった形で、鑑賞者の関心の深さに合わせた見方をしていただけるように、アーカイブにも工夫を加えながら整理を進めています。